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出典: KazusaWiki
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マイクロトム基礎知識
1.Micro-Tomとは
Micro-Tomは、トマト研究のモデルとして注目される、わい性のトマトである(図1)。草丈は15cm、果実は6gほどで、葉も小さく、狭い面積で多数の個体を育てられる。また、播種から開花・結実までの期間が一般のトマト品種よりも短く、約3ヶ月で世代を更新できる。蛍光灯下でも正常に発育することから、厳密に制御された人工的環境下での栽培にも適している。アグロバクテリウムを介した形質転換も可能である。このようにモデル植物としての要件を満たしているMicro-Tomは、トマトやナス科植物のみならず、果実をつくる様々な植物の研究モデルとしても利用が期待される。
Micro-Tomは、J. W. Scott博士とB. K. Harbaugh博士によって、ホームガーデニング用のトマトとして育成された(Scott and Harbaugh, 1989)。草丈が低いだけのわい性品種とは異なり、葉や果実も小さいのが特徴である。ポットやハンギングバスケットでの栽培に適した品種である。
1997年にMeissnerらによって、Micro-Tomがトマト研究のモデルに適していることが紹介された(Meissner et al., 1997)。Meissnerらによると、1平方メートルあたり1357個体の栽培が可能であり、播種後70-90日間で成熟した果実が得られる。また、化学薬品処理による突然変異系統や、トウモロコシのAc/Dsトランスポゾンを利用したタグラインを作製し、大量スクリーニングに使用できることを示した(Meissner et al., 2000)。
1-1)Micro-Tomの育成
Micro-Tomは、Florida BasketとOhio 4013-3を交配した後、12世代自殖させた品種である(図2)。植物体の小ささとFusarium wilt race 1抵抗性はFlorida Basketに、小型の果実や葉の性質はOhio 4013-3に由来する。
1-2)耐性
・トマト萎凋病レース1(Fusarium oxysporum Schlecht f. sp. lycopersici (Sacc.) Snyder and Hansen)
・トマト斑点病(Stemphylium solani Weber)
・裂果症状
・尻腐れ症状
・すじ腐れ症状
(病徴については、病理版マイクロトムコンソーシアム ホームページを参照
1-3)Micro-Tomの主要遺伝子座について
Micro-Tomは、dwarf, miniature, determinateの性質を持つ。
Meissner et al.(1997)によると、1)小ささの性質は、分離比から二つの遺伝子に支配されていると考えられる。2)育成の経緯からDwarf とMiniatureが関与していると考えられる。とのことである。Emanuel and Levy(2002)では、3つの主要遺伝子座としてDwarf, Miniature, Self Pruning をあげている。
1-3-1)各遺伝子座について報告
Dwarf
brassinosteroid生合成に関与するcytochrome P450 酵素の変異による(Bishop et al., 1996)。本酵素は、6-deoxocastasterone(6-dexoCS) → castasterone(CS)を触媒する(Bishop et al., 1999)。
Miniature
未同定?
Self-Pruning
茎頂分裂組織からの生殖器官と非生殖器官の作成パターンを調節する遺伝子。AntirrhinumのCENTRORADIALIS(CEN)、ArabidopsisのTERMINAL FLOWER 1(TFL1)とオルソログの関係にある(Pnueli et al. ,1998)。
1-4)種子の入手について
Micro-Tomは市販品種なので、販売目的でなければ、研究者間で譲渡できると考えられる。(Scott and Harbaugh (1989)には、“Distribution of seed for commercial production purposes will be handled through the Florida Foundation Seed Producers, Inc., P. O. Box 309, Greenwood, FL 32443.”と記されている。)
入手方法 ・トマトNBRPに分譲依頼すればオーケー。
・Micro-Tomを使用している研究者から分譲をうける。
・Tomato Genetics Resource Center(TGRC)から取り寄せる。研究者向けに最低限、必要な種子だけを配布している。ホームページで申し込むことができる。TGRCでのMicro-TomのAccession Numberは、“LA3911”。
1-5)その他
・近縁の品種
Micro-Tina:Micro-Tomより香りの良い品種。Micro-TomとPI270248(Sugar)を交配。
Micro-Gold:Micro-Tomと似た特性を持ち、果実が黄色の品種。Florida Petite, Florida Basket, Ohio-4013-3などに由来(Scott and Harbaugh, 1995)
Micro-Gemma:Micro-GoldとPI270248(Sugar)を交配。
1-6)引用文献等
Bishop GJ, Harrison K, Jones JDG (1996) The Tomato Dwarf Gene Isolated by Heterologous Transposon Tagging Encodes the First Member of a New Cytochrome P450 Family. Plant Cell 8, 959-969
Bishop GJ, Nomura T, Yokota T, Harrison K, Noguchi T, Fujioka S, Takatsuto S, Jones JDG, Kamiya Y (1999) The tomato DWARF enzyme catalyses C-6 oxidation in brassinosteroid biosynthesis. PNAS 96, 1761-1766
Emanuel E, Levy AA (2002) Tomato mutants as tools for functional genomics. Curr. Opin. Plant Biol. 5, 112-117
Meissner R, Chague V, Zhu Q, Emmanuel E, Elkind Y, Levy AA. (2000) A high throughput system for transposon tagging and promoter trapping in tomato. Plant J. 22, 265-74.
Meissner R, Jacobson Y, Melmed S, Levyatuv S, Shalev G, Ashri A, Elkind Y, Levy AA. (1997) A new model system for tomato genetics. Plant J. 12, 1465-1472
Pnueli L, Carmel-Goren L, Hareven D, Gutfinger T, Alvarez J, Ganal M, Zamir D, Lifschitz E (1998) The SELF-PRUNING gene of tomato regulates vegetative to reproductive switching of sympodial meristems and is the ortholog of CEN and TFL1. Development 125, 1979-1989
Scott JW, Harbaugh BK (1989) Micro-Tom A miniature dwarf tomato. Florida Agr. Expt. Sta. Circ. 370, 1-6
(本文献は、一般に入手が困難なので、コピーのリクエストは津金<tsugane@kazusa.or.jp>までお願いします。)
Scott JW, Harbaugh BK (1995) ‘Micro-Gold’ miniature dwarf tomato. Hort Science 30, 643-644
マイクロトムの育て方
Micro-Tomは植物体のサイズが小さく、小面積で多数の個体を育てられる。また、蛍光灯下でもよく発育する。環境を制御した実験室内での栽培に適した品種である。
マイクロトムの形質転換
KazusaNavigationのJSOLプロジェクトに
Sun et al (2006) Plant Cell Physiol., 47: 426-431A highly efficient transformation protocol for Micro-Tom, a model cultivar for tomato functional genomics.
と
が収納されていますのでご参考に。
マイクロトムの種の取り方
果実がオレンジ~赤色になると採種できる。
・採種
1. 果実を赤道面で二分割し、中の種子をゼリーごと容器(ビーカー、紙コップ、ファルコンチューブなど)にあける。
2. 1.へゼリーが充分に浸る程度の0.8~1%塩酸を加え、容器を振って軽く攪拌後、10~15分静置する。
3. 2.を茶漉しに通し、種子を回収する。塩酸はバケツに回収し、pH調整後、廃棄する。
4. 茶漉しごと流水(水道水)で1分間洗浄する。
5. ペーパータオルに広げ、一晩風乾する。
塩酸を用いない方法
1. 果実を包丁で割り、薬さじ等で種子をビーカーに取り出す。
2. 水を加え、スターラーで攪拌する。
3. ある程度分離できたら攪拌を止める。
4. 少しおくと種子が沈むので、ゼリーを含む水を捨てる。
5. 再び水を加え、攪拌する。ゼリーがほぼ無くなるまで2.-5.の作業を繰り返す。
6. ゼリーが無くなったら、種子をろ紙等の上に広げ、乾燥させる。(私たちは37℃に設定したインキュベーターの中で乾燥させている。)
・保存
トマトの種子は低温乾燥状態で長期保存が可能である。シリカゲルと一緒にして密閉容器に入れ、冷蔵庫(4℃)で保管する。
挿し芽による増殖
Micro-Tomは挿し芽による増殖も可能である。挿し芽による増殖は、複数の突然変異を持つ系統や形質転換体、形質分離系統(F2)の増殖など、クローンとして株を増やしたいときに有効な手段のひとつである。
ただし、挿し芽の成功率を高めるには、ある程度の経験や注意深い観察が必要である。また、形質転換体などで成長が遅いなど生育に変化が起きている株は根付きが悪いことがあるので注意が必要である。
1. 挿し芽には新芽が出ている枝を使用する。できるだけ若い枝が良い。また、葉が多くついているほうが良い。
2. 新芽の下1~2cmの部分で切断する。よく切れるハサミを使用する。
3. 切り口を水でしめらせ、発根促進剤(ルートン 武田園芸株式会社 アルファーナフチルアセトアミド塗布剤)を切り口から1cmくらいの部分までつける。
4. 枝を入れる穴をあけたロックウールを水(肥料は加えない)でしめらせ、穴に枝を挿す。新芽が埋まらない程度挿し、挿した根元をしっかり押さえて安定させる。
5. 25℃前後、蛍光灯下におく。(遮光やラップで覆うなどの乾燥対策はとくに行っていない。)
6. 水を切らさないように注意しながら、潅水を続ける。最初の2週間は肥料を与えない。2週間後から液肥(1/1000 ハイポネックス)を加えて潅水する。
7. 根がつかなかった枝は1~2週間で枯れてくる。
8. 根がついたものは、ロックウールごと培養土の入った鉢に移植すればさらに大きく育てられる。ロックウールのまま1ヶ月を過ぎると葉が枯れてくることがあるが、そのときは移植をしたほうが良い。

